ライザップ。
その印象的なCMは日本に大きなインパクトを与え、関連する商品は大ヒット。CMには有名人を起用し、15秒のCMで劇的なビフォーアフターを魅せつける。
このライザップがブームとなった背景にこそ、多くの人が満足のいく人生を送ることができない理由がある。
人々を引き寄せ、魅了するのはいつだってインスタント
ライザップのCMには、肥満体型からナイスボディに代わるまでに要する「過酷な食事制限」と「ガチトレーニング」が一切紹介されない。ビフォーアフターのみを効果音とともに印象的に映し出すことでインパクトのあるcmに仕上がっている。
(同様のcmでも、ハードなトレーニング風景を盛り込んでいるだけ、マッスルジムのCMは良心的だ。)
ライザップは短期間でのボディメイクを売りとしている。このメソッドには賛否両論あり、この記事では詳しく言及はしない。
それよりも、本記事では多くの人が「すぐほしい」病に感染してしまっていることに警鐘を鳴らしたい。
僕の人生哲学の根幹を成す「スライトエッジ」より第4章「あたりまえのことをきちんとやる」よりこの問題を考えてみよう。
理由その1:簡単にできるから
ボディメイクは簡単だ。日々の食事に気を付け、継続的な運動をする。それだけでいい。だが、同時にそれをしなくていいということも非常に簡単だ。ライザップを利用するには数十万円の費用が掛かる。この金額は「それをしない理由」を弱めるのに効果的だ。もったいないという心理作用が働く。だが短期間で成功した後はどうだろう。行動のモチベーションであった「お金」という要素が減弱する。短期間で自分を追い込むことの危険性はその反動の大きさだ。短期間で結果を出すことに価値観を置いている人は、短期間で結果が出なければ当然苦心する。簡単にできることを大事にしよう。簡単にできることでないと続かない。続くからこそ人生が変わる。
理由その2:結果が目に見えないから
あなたが今日、夕食の炭水化物を抜いたところで、明日の自分が劇的な変化を遂げることはない。だがその小さな行動を続けていけば、確実に体は変化する。それは生理学的に実証された事実だ。だが「すぐほしい病」に感染した現代人は、今日の行動が明日、もっと言えばその場で変化しないとすぐに不満が出る。その点、ライザップは糖質を極限まで減らすという「極端」な方法をとる。もちろん「極端」なことをすれば結果はすぐに出る。この結果が「すぐほしい病」に感染した人たちを魅了する。結果は数年後に出る。悠然と構えて行動を続けよう。
理由その3:重要なことだと思えないから
あなたはご飯茶碗の一口を我慢した所で、ボディメイクに大きな影響はないと考えるだろう。しかし、それを1年続けたらどうだろう。一口が20kcalだとして一年間にすると7300kcla。脂肪1キロ分だ。それを3年、5年、10年・・・それは恐ろしいほどの結果になる。やるべきことあご飯のたった一口だけ。その瞬間は重要ではないと思えることが積み重ねるととてつもない結果となって違ってくる。これこそがスライトエッジの神髄だ。ライザップにはスライトエッジのスの字もない。ライザップが人々に訴えるのは「驚くべき短期間で人生が変わりますよ」ということだ。ビジネスとしては成功なのだろうが、個人レベルではまったく参考にすべきでないことは確かだ。
ライザップによって人生を素晴らしい方向へ変えた人もいいだろう。だが人間が変わるということはそんなに劇的なものではない。今日何を食べるか、何を着るか、誰と会うか、そういった些細なことで決まるということを忘れないでほしい。
小さいことにくよくよするな!―しょせん、すべては小さなこと (サンマーク文庫)